店舗の出店計画を立てる際、需要予測や白地の特定、見込み客の予測は不可欠です。マーケティングの成功は、商品やサービスの計画通りの販売だけではなく、莫大な出店投資も無駄にしないことにも関わります。最適な店舗出店を実現するためには、どのような予測方法が有効なのでしょうか？　今回は需要予測の内容や精度を高める方法などについて解説していきます。

出店計画や集客の効率化に欠かせない需要予測とは

需要予測とは、一般的に自社の商品やサービスに対する顧客の需要を予測することを指します。店舗出店に関する予測には、「商圏や特定エリアの需要予測」、「来店予測」、「売上予測」などが含まれます。さらに、このような調査・予測を基に白地（需要があるのに出店できていないエリア）の特定することも重要で、出店計画や投資計画の策定時に不可欠です。

店舗出店における需要予測については、過去には「このエリアなら住民が多いから売れる」や「あの競合店が出店しているから売れる」など、過去の経験則や定性的な情報に依存していたこともありました。しかし、こうした予測は精度が低く、周辺環境の変化があると対応できませんでした。そのため現在では統計的なデータに基づく予測が最も重要になっています。

店舗や施設への集客を検討するにあたって、需要予測とはどのような点で重要なのでしょうか？

まずデータに基づいた精度の高い需要予測により、適正な在庫や人員の確保が可能となり、販売に関わる機会損失や非効率さを解消することが可能です。さらに、他店舗や競合店が自社の出店予定エリアに進出している場合でも、それらの店舗との比較を通じて売上の伸びや奪取の可能性を判断できます。

結果として、このような判断を基に計画的に需要のあるエリアへの新規出店が可能になるので、投資の効率が上がります。適切な需要予測はマーケティングの効果を高め、経営や投資の無駄を低減させる効果があるのです。

人の経験と勘に基づく予測の課題

店舗の出店に関わる計画や需要予測は、これまで人の経験と勘に基づいて行われてきましたが、次のような課題があります。

• サンプル量やデータ量や十分ではない
  人が経験や勘に基づく予測では、十分なサンプル量やデータ量が確保されない傾向があります。正確な予測にはデータの量が重要です。データが十分にない状態では、誤った予測につながる可能性が高まります。

• 個人の経験に基づいているため客観性に欠ける
  出店計画には近隣の状況、たとえば幹線道路の有無や公共交通機関からの距離、顧客として期待できる住民の数などさまざまな情報が必要です。経験豊富な担当者であれば、過去のデータからだけでは見えない需要の変化を捉えることも可能かもしれません。しかし、個人の主観や偏りが反映される可能性が高く、属人的な予測になりがちです。

• ステークホルダー全員の合意形成がしづらい
  店舗の出店では莫大な投資が必要なため、合理的な判断が求められるでしょう。人の経験や勘に基づく予測だけでは、判断の根拠やプロセスが不透明なため、経営層や組織全体の合意形成が難しくなります。

人流データ×商圏の可視化とは？

そこで有効的なのが人流データです。

人流データとは許諾を得たユーザーから取得した位置情報から生成されるデータで、人の移動や滞在時間など人の動きに関する情報を高精度かつ高頻度に得ることができる特徴を持ちます。近年のスマートフォンの普及によりこのデータを取得しやすくなったことで、活用の場は急速に広がっています。

人流データの活用は、過去の記事でも詳しく解説しています。
人流分析で何ができる？活用の場はどんどん広がっている 

人流データを活用すれば、以下のようなことができます。

• 自店舗や自施設に「どこから」「どんな人が」来ているのかわかる
  自店舗及び他店舗に来店した顧客が、どのエリアから来ているかを分析することが可能です。また性別や年代などの属性も把握できます。

• 伸び代が大きいエリアの可視化
  商圏内の来訪者を可視化できるため、どこにまだ伸び代があるのが、どこが狙い目なのかのプランニングに繋げることが可能です。

• 他店舗、競合店対策
  人の流れを時期や季節、天候などで分析し、他店舗や競合店と比較することで自店舗との違いを把握可能

• 出店やプロモーション実施の判断
  精度の高い白地の特定や広告を実施して効果のあるエリアかどうか、また売上の伸び代があるかどうかなどを特定可能

また、人流データでは、ターゲットとすべきエリアの状況や顧客の属性を定期的に判別することも可能です。過去データと合わせて活用することで、集客数向上のマーケティング施策の策定や効果検証につなげることもできます。
商圏分析で何ができるのか。〜データ活用の方法とポイントまとめ〜

人流データを活用したマーケティングへの活用イメージ

では人流データによる商圏の可視化は、どんな活用ができるのでしょうか？

チラシやポスティングの配布エリア選定

店舗に来訪客を捕捉し分析することで、折り込みチラシやポスティングの効果が出やすいエリアを選定することができます。たとえば、町丁目ごとにチラシの効果を可視化することで、どんな属性・行動傾向の顧客が店舗に来訪するのかを分析できます。ターゲットとなる顧客層が明確になり、効果的な配布エリアの選定につなげることが可能となります。

ターゲットとなる顧客層のなかには、折り込みチラシをあまり見ない顧客もいるでしょう。そうした顧客にはWebからピンポイントでアプローチすることも可能です。顧客に合った効果的なアプローチ方法を選択することができます。

需要予測に基づく広告・プロモーションの実施

需要予測は、広告、特売、キャンペーンなどのプロモーションにも活用されます。たとえば過去のデータから来店数が落ち込む時期や曜日を予測し、そのタイミングに合わせたキャンペーンを実施することで、来客を促進できます。既存店舗や既存商品の需要予測に基づいて分析を行えば、販売促進策や販売チャネルの見直しを検討することも可能になるのです。

また先述のサードパーティーデータを利用すれば、自社店舗と競合店舗を比較のうえ、自社に優位な顧客（未来店の顧客や潜在的な新規顧客）に対して優先的に広告配信（チラシやDMを含む）を行うことも可能です。自社店舗への推定来訪者が多いのにもかかわらず、実際の来訪率が低いエリアは、今後来訪率が伸びる可能性があるため、広告配信の有効なターゲットとなります。
商圏分析で何ができるのか。〜データ活用の方法とポイントまとめ〜

まとめ：需要予測の精度向上には人流データの活用が効果的

出店計画や広告プロモーションに必要な需要予測にはいくつかの方法がありますが、人の経験や過去データだけに頼った従来の方法では、変化の多い昨今の状況に対応しきれず、十分な精度を得ることが難しくなってきました。需要予測の精度を高めるためには、天気や販売トレンドなどさまざまなデータが必要ですが、特に注目されるのが人流データです。人の動きを高頻度かつ高精度に把握することができ、需要予測の精度向上に役立ちます。

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