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スマートシティの実現に向けて活用がすすむ人流ビッグデータとは?そのメリットを解説

スマートシティ計画の策定時には、交通や人の流れを把握した上で、建物や公園などの施設、道路を配置することが何より大切です。交通量や人流(人の流れ)については、人力でのアンケート調査や交通量調査が主流ですが、昨今では人流ビッグデータを使う方法が登場しました。では、人流ビッグデータとはどのようなもので、どのような活用メリットがあるのでしょうか? 今回は人流ビッグデータの概要から活用のメリット、スマートシティ計画における活用事例などについて紹介していきます。

人流ビッグデータの概要

ビッグデータ(Big Data)とは、全体を把握することが難しいほど巨大で、日々生成される多種多様なデータ群をいいます。実はビッグデータには明確な定義が存在しておらず、Volume(量)、Variety(多様性)、Velocity(速度もしくは頻度)の3要素を高いレベルで備えていることがビッグデータの条件となっています。

つまりビッグデータは、あらゆるソース(もしくはチャネル)から集められたデータを指し、たとえばSNSから集められたコメントやプロフィール、ECサイトやブログから収集されるユーザーの購入履歴や行動履歴、各種センサー(人感センサーや温度センサー)やGPS、Wi-Fiなどから集められる位置情報まで、その種類は膨大です。

総務省は2017年(平成29年)に発表した「情報通信白書」の中で、個人と企業、政府が生み出すビッグデータの構成要素を大きく3つに分類しています。

・政府:国や地方公共団体が提供する「オープンデータ」

・企業:暗黙知(ノウハウ)を「デジタル化・構造化したデータ」
    M2M(Machine to Machine)から吐き出される「ストリーミングデータ」

・個人:個人の属性に係る「パーソナルデータ」

3番目のパーソナルデータは、個人の属性情報や、移動・行動に関する情報、購買履歴などを含むデータで、この中の1つが今回ご紹介する「人流データ」です。人流データは、GPSやWi-Fi、携帯の位置情報データに基づき生成される、人の流れ(移動)に関するビッグデータです。

人流ビッグデータ活用のメリット

では、人流ビッグデータ活用のメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?

以前は人の流れや交通量、車の流れを把握するために、人手によるカウントが行われていました。道路の脇や交差点、人の流れが多い通りなどで、カウンターを片手に数を数えている人を見かけたことはないでしょうか? これが以前行われていた、人流や交通量の調査です。このような調査には、莫大なコストと人手、調査期間がかかります。また、調査できる場所も限定的で、データの解像度も決して高いものではありませんでした。

人流ビッグデータの活用であれば、多額のコストや人員、長期に渡る調査期間が必要ありません。調査場所も、必要に応じて任意に決められます。また、人流ビッグデータは基本的に機械(デバイスや基地局)が集めるデータなので、より高い解像度で人の流れを可視化することが可能です。

くわしくはこちらの記事をご覧ください。

スマホGPSを活用した人流データを低コスト、短納期で提供! Profile Passportで「まちづくりDX」を実現

スマートシティ計画を策定する場合には、これまでは広範囲かつ長期間に渡る調査が必要でした。しかし、人流ビッグデータの登場によって、容易に質の高いデータの取得ができるようになり、より効果的な計画の策定が可能になりました。

人流ビッグデータからわかること

上記のように人流データ(人流ビッグデータ)は人の流れを可視化しますが、この流れの可視化は徒歩に限ったことではありません。人流ビッグデータは人が持っているデバイス(スマートフォンやタブレットなど)から移動の情報(位置情報)を得ますが、その移動経路や速度を計算することにより、持っている人が徒歩なのか、また車両や鉄道を使っているのかを知ることができるのです。

これらの情報を「トリップチェーン」と呼びます。たとえば多くの人の、出発地 → 徒歩 → バス → 地下鉄 → 目的地などのトリップチェーンを分析することにより、バス停の位置や数、駅の場所、カーシェアステーションの設置場所などを、効率的に計画できるようになります。人流ビッグデータは、人の手で交通量や人の移動目的を調査していた時代にはわからなかったデータを、効率的に、より正確に得ることができます。また、このようなデータは、現在ではスマートシティ計画の策定時には必須のデータとなっています。

また、高度情報も取得可能なため、デバイスを持っている人が地上を移動したのか、地下街を通ったのかも見分けられます。

人流ビッグデータは、スマートシティ計画のさまざまな分野で応用が可能です。次章では人流ビッグデータの活用事例について見ていきましょう。

スマートシティ計画における人流ビッグデータの活用事例

  • 交通施策

・道路渋滞対策

渋滞の原因分析として時間帯別に人や車の交通量を把握したい場合、また、渋滞対策の効果検証として施策前後の交通状況を把握したい場合などに、人流ビッグデータが活用できます。

・公共交通の最適化

公共交通機関(市バスや鉄道)の利便性や利用率向上を目的とし、どのような人がいかなる目的や手段でどこへ移動しているか、現状の移動実態を把握したい場合に人流ビッグデータは活用可能です。このようなデータを把握すれば、停留所の数や位置、バスの本数、駅の配置やダイヤなどを最適化できます。

・交通事故対策

人の通行量と車の交通量、過去の事故発生状況をクロス分析すれば、事故が起きやすい場所や時間帯、状況を把握できます。事故が起こりやすい場所と要因を特定して対策を立てれば、交通事故の防止につながります。

  • 街づくり

・大規模再開発

駅前など大規模な再開発は、土地の買収や立ち退きなどに長い年月が必要です。そのため、再開発を効率的に進めるためには、開発の優先順位を決めることが重要です。人流ビッグデータは、一定期間の当該エリアの交通量を可視化するために活用できます。人流ビッグデータを分析することで、人や交通の流れが滞留しやすい場所を把握し、この情報を元に、再開発の優先順位をつけることが可能です。

・地域経済の活性化

地域経済の活性化を目的として、来訪者が多い地点や移動経路などを把握する場合、人手による実地調査やアンケート調査では時間やコストがかかり、詳細分析も困難となってしまいます。現状の交通量や移動のニーズ、移動手段を分析するのであれば、人流ビッグデータを活用するのが近道です。人流ビッグデータであれば、季節や時間帯ごとの変化もリアルタイムで把握できます。

・公共施設の出動状況把握

病院や消防署、警察署などの位置や出動状況は、人の命に関わる大切な情報です。緊急時には、地域のどこへでも同じ時間で出動できることが、これらの公共施設(機関)には求められています。人流ビッグデータであれば、時間帯ごとの交通状況や人の混雑状況をコストと期間をかけずに把握できます。スマートシティ計画には、通常時だけでなく緊急時の対応についても盛り込んでおく必要があります。

  • 防災

防災計画

防災計画策定のためには、避難勧告後や災害発生後の「実際の避難行動」を予測する必要があります。

災害発生時の避難場所を設定し、そこに地域の人が移動するルートをあらかじめ設定しておかなければ、万が一の場合に混乱が発生する可能性があります。これを防止するためには、普段から人の流れが滞留しやすい場所や危険なルートを人流ビッグデータで把握し、避難誘導看板の設置位置検討や事前のルート告知などを行っておくことが重要です。

まとめ:低コストで高精度「人流ビッグデータ」で高度なスマートシティが可能に

スマートフォンやタブレットなどの各種端末から取得される、位置情報データを用いて生成される人流ビッグデータを活用すれば、低コストで今まで以上に高精度なデータに基づいたスマートシティ計画が可能となります。また、人流ビッグデータは今までのようにアナログな手法ではないので、移動手段やトリップチェーンといった解像度の高いデータも容易に取得できます。

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