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店舗の売上予測の精度を上げるために位置情報データを活用するポイント

新規開店する実店舗の売上予測を正確に行えなければ、投資資金の回収やキャッシュフローに影響が出てしまいます。店舗ビジネスでは商圏の売上予測を立てたうえで出店計画を立案するのが一般的ですが、当初の予測と実際の売上がズレてしまうことは少なくありません。売上予測はなぜ誤差が生じてしまうのでしょうか? 今回は売上予測の精度が下がってしまう要因や、効果的な対策について解説していきます。

出店計画には売上予測の精度が重要 

実店舗を出店する前の売上予測はとても重要です。この予測が誤ったものであれば売上は予測に届かないものとなり、店舗の運営計画に大きな狂いが生じることになります。このような計画の狂いは、以下のような影響を及ぼすこととなります。

  • 過剰在庫の可能性

商品を販売する店舗であれば、予定した販売量に達せず大量の在庫を抱えてしまう危険性があります。また物品が長期保存できないものであれば、すべて廃棄となりロスが増大します。

  • 人件費の無駄

店舗の人員配置は、予測した来客数や販売量によって事前に決めておくものです。人員はすぐに異動させるわけにもいかず、来客数や販売量が少なければ必要以上に人件費がかかってしまう可能性があります。

  • 赤字店舗となる可能性

売上が目標未達でコストが利益を上回れば、店舗は赤字となってしまいます。赤字の店舗では投資の回収ができないばかりでなく、従業員の士気が下がることにより、サービスが低下してますます客足が遠のき、店の赤字が増してしまいます。

  • キャッシュフローの悪化

投資資金の回収に遅れが発生し、経営母体である本社のキャッシュフローが悪化する可能性もあります。売上や利益が未達となれば、銀行からの短期借入が必要になる場合もあります。経営に与えるインパクトは決して小さなものではありません。

  • 店舗や事業の撤退

売上目標未達の状況が長期にわたって改善しなければ、店舗の閉店や事業自体の撤退も検討する必要が出てきます。

上記のように、精度の低い売上予測は開店する店舗のみならず、店舗を運営する企業の経営にも大きな影響を及ぼす可能性があるのです。

売上予測に誤差が生じる要因とは?

では出店前の売上予測には、どのような要因が影響して誤差が生じてしまうのでしょうか?

売上予測に誤差が生じてしまう要因

  • データの不足

売上予測の分析に必要なデータが十分に揃っていない場合、予測に誤差が生じてしまいます。一般的に売上予測に必要だといわれているデータは、この後に解説します。

  • データが不正確

必要だといわれているデータを収集できたとしても、根拠のない不正確なデータが混入すると、精度(正確性)を落としてしまうことがあります。

  • 分析方法の選択ミス

売上予測の分析方法にはハフモデル分析や重回帰分析(後述)がありますが、これらの分析方法が実態に合っていなければ、精度の高い売上予測をすることはできません。

  • 開店後の調査不足

開店前と開店後では、店舗を取り巻く状況が変化することがあります。例えば競合店の新規開店や、流行の変化により消費者の嗜好が変わった場合などです。売上予測は一度行えばそれで終わりではなく、開店後も状況の変化に合わせて継続して調査・分析を行うべきなのです。

売上予測に必要なデータ

  • 店舗の商圏人口

自社の店舗を中心として半径数キロの円を描き、店舗の商圏を定めます。商圏人口とはこの円の中に居住する人口のことで、店舗に買い物に来る人の予想数となります。※来店する顧客が徒歩ではなく自家用車や電車・バスなどを利用することが考えられるなら、商圏の半径は十数キロに広がる場合があります。

  • 人と車(路面店の場合)の通行量

商圏人口を把握できたとしても、すべての人が来店するわけではありません。人や自動車には通行する道筋があり、店舗の近辺を歩く人と車の数を割り出さねばなりません。いかに商圏人口が多くても、店舗の周りに人通りの多い道がなかったり、幹線道路が通っていなかったりすると来店数は伸びません。

  • 商圏人口の年齢、性別、年収、嗜好など

サードパーティーが提供するデモグラフィックデータ(年齢、性別、家族構成、職業、学歴、年収、ライフステージなどの人口統計学的なデータ)を活用し、商圏内に住んでいる人の属性を把握しておきます。この属性を把握することにより、店舗で提供している商品やサービスが商圏内の人たちにマッチしたものかどうかをあらかじめ知ることができます。

  • 昼と夜の人口比率

商圏内の人口は、夜と昼で変化します。自社店舗のある町がベッドタウンかビジネス街かで、扱う商品やサービスが、その商圏に適しているものかどうかが変わります。

  • 店舗の面積

マーケティングの世界では、店舗に人を引きつける力を「吸引率(店舗の魅力値)」といいます。一般的に面積の広い店舗では吸引率は高くなり、店舗面積が小さくなれば比例して小さくなります。

  • 店舗の視認性

自社店舗がビルや他の店舗に隠れていないかどうか、来店客や歩いている人から視認しやすいかどうかを確認しておきます。店舗の視認性に問題があれば、店舗まで誘導する案内板や店舗の看板を工夫(看板自体を大きく見やすく変更するか、高い場所に掲示する等)する必要があります。

  • 競合店舗の数と距離

直接の競合となる店舗との位置関係や、店舗間の距離を把握しておきます。一般的に競合店が近くにあれば吸引率は下がり、離れれば逆になります。競合店との距離が近ければ、競合より大きな面積の店舗を準備するなどの対抗策が必要になります。

店舗ビジネスにおける売上予測精度向上のポイント

上記のようなデータが十分に揃ったら、「ハフモデル分析」や「重回帰分析」という分析手法を用いて売上を予測していきます。

  • ハフモデル分析

ハフモデル分析は、1960年代に米国のカリフォルニア大学で考案された商圏分析の手法です。顧客の自宅から店舗までの距離や、店舗面積といった「店舗の魅力値」を中心に分析を行います。売上の予測は、自店舗と競合店舗との状況を考慮しながら顧客数を算出し、客単価をかけ合わせることで算出していきます。

  • 重回帰分析

重回帰分析は、統計学で用いられる分析手法の1つです。既存店舗の面積やスタッフ数、販売商品数、駐車場の収容台数、駅からの距離などの複数要因が売上にどのように影響しているかを分析し、出店予定の新店舗に各変数を当てはめ売上高を予測します。既存店舗で得た標準的なパラメータを、新規店舗に当てはめて予測するところに統計学が用いられます。

上記のような分析手法に、より精度の高いデータを用いれば売上の予測はさらに誤差の少ないものになっていきます。例えば、デモグラフィックデータから得た商品の購買層と思われる人たちの「人流データ」を、位置情報を活用して取得できれば、自社店舗への顧客の流入量も正確に予測できます。店舗ビジネスにおける売上予測精度向上のポイントは、根拠のない予想ではなく実データに基づいた分析を行うことにあるのです。

まとめ:売上予測の精度向上には位置情報データの活用が最適

売上予測のズレは店舗の運営のみならず、本社の経営状態にも大きく影響します。出店計画の策定時には通常の分析方法に加え、位置情報データの活用も検討しましょう。位置情報データをユーザーの行動履歴情報などと組み合わせて人流を分析すれば、売上の分析に用いるデータはより現実に近いものとなります。精度の高いデータは、確度の高い売上予測を可能にします。ブログウォッチャーの提供するスマートフォン向け位置情報データサービス「プロファイルパスポート」であれば、ユーザーの行動履歴情報の可視化を加速させることができます。位置情報データの分析やマーケティングへの活用方法などは、ぜひブログウォッチャーにご相談ください。