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スマートツーリズムで観光地の諸問題を解決!活用されるデジタル技術と事例を解説

近年、観光業界において最新テクノロジーによる「スマートツーリズム」が注目されています。スマートツーリズムは、最新のデジタル技術を駆使し、より効果的に消費者を観光地に誘導する手法です。さまざまなデータ分析が活用され、個人の好みやニーズに合わせてカスタマイズされた旅行の提案が可能となります。それにより、消費者にとっての新たな旅行体験を生むことも可能となりました。本記事では、スマートツーリズムの基本概念から、その技術の活用方法までを探っていきます。

スマートツーリズムとは

スマートツーリズムとは、ビッグデータやIoT、クラウド、5G(第五世代通信)、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などの最先端技術を活用し、観光客のニーズに対応した情報提供や観光サービスを提供することを言います。スマートツーリズムは、上記のような最先端のデジタル技術を活用することにより、地域への観光客誘致や観光資源の最大活用、消費促進、地元住民や行政組織、事業者の持続的な価値獲得、オーバーツーリズムの解決などを目的として行われます。ここでは、スマートツーリズムで期待できる具体的な効果や解決できる問題を確認しておきましょう。

スマートツーリズムで期待できる効果

  • 観光客の利便性向上
    IoTやクラウドの技術を活用することで観光客に適時・適切な情報を提供すれば、観光客の利便性が向上します。例えば観光地の混み具合や交通状況をリアルタイムに把握できれば、観光の予定を再検討したり観光地へのアクセス方法を変更したりといった調整が可能になるのです。観光地としても、来訪する観光客の数が可視化されることにより、観光スポットや店舗における人員の配置や土産物・食材などの商品在庫の調整を行えます。
  • 観光客の誘致
    観光資源の魅力をさまざまな方法を使ってアピールすることができれば、今まであまり知られていなかった観光地にも観光客を誘致することができるようになります。また、最先端技術により観光地の利便性をアピールすることも、観光客の誘致につながります。
  • 観光消費の促進
    スマートツーリズムの活用によって観光客が継続的に観光地を訪れてくれれば、地域の店舗や宿泊施設などの観光消費が促進されます。観光消費の促進は、雇用の創出、税収の向上など、地域経済の発展にもつながります。
  • 観光地のオペレーション改善(効率化)
    想定外の数の観光客が観光地に押し寄せれば、観光地は混乱して効率が低下してしまいます。例えば混雑がひどく観光地や店舗に入れない、土産物の商品や飲食店での食材の数が足りなくなる、ゴミの処理が追いつかないなどのマイナス面が目立つようになると、観光地としての魅力に影響を与えかねません。スマートツーリズムは、適切な情報を観光客と観光地に与えることにより、観光地のオペレーションを改善します。
  • 新しい観光価値の創出
    後述するVRやARの技術を活用することにより、既存の観光資源に新たな価値を付加することができるようになります。例えばARの技術を使えば、今はもう無い古代の風景や、過去に焼け落ちてしまった城郭などを仮想的に目の前に復元することができます。最先端のデジタル技術は、今までに無かった顧客体験を観光客に提供できるのです。

スマートツーリズムで活用されるデジタル技術

スマートツーリズム実現のために使われる最先端のデジタル技術には、以下のようなものがあります。

  • ビッグデータ
    ビッグデータとは、IoTセンサーやAIによる機械学習で集められた巨大なデータ群を指します。ビッグデータをスマートツーリズムに活用することにより、観光客のし好や行動の傾向を含む最適な情報を観光地に提供できるようになります。なかでも人流データ(人の移動をリアルタイムで可視化するデータ)を活用することにより、道路の渋滞対策や公共交通の最適化、観光客の誘導や施設の効率的な活用などが可能になります。

    *株式会社ブログウォッチャーでは、観光領域向けのサービス「おでかけウォッチャー」を展開しています。このサービスでは、利用者の許諾が得られた位置情報ビッグデータを活用し、地域の観光や交通などの課題を解決するためのDX推進をサポートしています。
    Odekake Labo おでかけ研究所 | 株式会社ブログウォッチャー

*2023年10月12日より、「デジタル観光統計オープンデータ」と連動した観光来訪者数の分析「デジタル観光統計オープンデータ分析」を提供開始しています。
観光人流モニタリングサービス「おでかけウォッチャー」における日本観光振興協会「デジタル観光統計オープンデータ」お試し版と連動した観光来訪者数の提供開始について

  • IoT
    IoT(Internet of Things)とは「モノのインターネット」という意味で、インターネットを活用したデジタル技術連携全体を表す言葉です。スマートフォンやデジタルデバイスを、インターネットを介してクラウドや産業機器、各種センサーなどとつなぎ、各種サービスを使いやすくする技術だと考えればよいでしょう。例えば車両のセンサーやGPSとスマートフォンのアプリを連携させることで、観光バスの現在位置の確認や到着時刻の予測などに活用することができます。
  • VR
    VR(Virtual Reality)は、仮想現実と訳されます。VR技術とスマートフォン、スマートグラスを組み合わせて使えば、仮想のデジタル空間で事前に旅行先の名所や魅力的な場所をリアルに体験することができます。
  • AR
    AR(Augmented Reality)は拡張現実と訳されます。ARはスマートグラスやスマートフォンを使って、現実の世界に仮想の世界を重ね合わせることができる技術です。AR技術を使えば、スマートフォンの画面に多言語対応のルート案内を載せることや、今では失われてしまった歴史遺産を映し出すことが可能になります。
  • 5G通信
    IoT、VR、ARのような技術をストレスなく、また効率的に使うためにはデジタルデバイスとサーバー(コンピューター)、クラウドとの高速通信が必須となります。スマートツーリズムの実現には、5Gといった高速・大容量で多接続、低遅延(リアルタイム)のインフラ整備が欠かせません。

こうした先端技術を活用したスマートツーリズムの実現は、インバウンド需要の増加で問題となっているオーバーツーリズムを含む観光地の諸問題の解決につながると言われています。オーバーツーリズムについては以下をご参考にしてください。

「オーバーツーリズム」については、次の記事を参考にしてください。
「オーバーツーリズムは何が問題?位置情報は対策のひとつになる」

スマートツーリズムの事例

ここでは、国内と海外のスマートツーリズムの事例を簡単にご紹介しておきましょう。

スマートツーリズム 国内の事例

  • 観光快適度マップ(京都府・京都市観光協会)
    京都市では、観光地の混雑を5段階で示す観光快適度の予測や、ライブカメラのリアルタイム映像を提供しています。これにより観光客は、目的地の混雑状況を把握できるとともに、時間調整を行うなどして観光を効率的に進めることができます。このようなスマートツーリズムは、先述した人流データの活用により実現可能です。
  • 顔認証観光案内板(和歌山県・南紀白浜空港)
    和歌山県の南紀白浜空港では、空港内に顔認証を用いたデジタルサイネージを設置しています。観光客がこの前に立って自分の顔を読み込ませれば、あらかじめ登録されたプロファイルから観光案内を受け取ることができます。また観光地としても、この仕組みにより観光客のニーズを捉えやすくなっています。
  • 観光分析の共同研究(福岡県糸島市/九州大学)
    九州大学と糸島市の共同研究において、観光動態分析システム「おでかけウォッチャー」を活用した、人流データと検索データをかけ合わせたデータの分析を行っています。「おでかけウォッチャー」により、どんな検索キーワードを使ってそのスポットを訪れたのか、なぜそこに人が集まったのか、なぜこの時期に来ているのかという分析が可能になり、特に観光客は「食を目指して糸島へ来ている」ということがデータとしてはっきり出ていたため、今後はますます食をメインとした観光プロモーションを行おうと方向性を捉えられるようになりました。
    九州大学と糸島市の共同研究について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
    大学と自治体で連携したビッグデータの活用 糸島市との共同研究における観光人流の見える化

スマートツーリズム 海外の事例

  • 電動キックボード(韓国・ソウル)
    電動キックボードは環境負荷が少なく、特に欧米からの外国人観光客に認知度が高い移動ツールです。韓国のソウルでは、海外からの観光客向けに電動キックボードのシェアリングサービスを提供しています。乗り捨てが自由で免許もいらない電動キックボードは、観光客にとっては利便性が高く、地域にとっては交通渋滞緩和や排ガス削減につながるメリットがあります。このようなサービスも、人流データを活用すれば充電ステーションの設置や混雑緩和を効率的に計画することができます。
  • 観光地推奨チャットボット(オランダ・アムステルダム)
    オランダのアムステルダムでは、チャットボットを活用したスマートツーリズムを展開しています。観光客がアプリで興味や関心に関する質問に答えると、それぞれの趣味やし好に合ったスポットをチャットボットが提案してくれます。このシステムを利用すれば、知られていない観光地への誘導や、反対に混雑する一部スポットへの集中を回避することが可能になります。

まとめ:スマートツーリズムの実現には観光客の行動把握が重要

スマートツーリズムの実現には、観光客の属性や行動、し好性を的確に把握することが不可欠です。デジタル技術の進化により、観光地では様々な情報がリアルタイムで収集され、データを分析することで旅行者のし好や動向が把握されます。特に人の流れの把握と制御は、観光の質と観光資源の効率化を大きく左右することになります。デジタル技術とビッグデータの活用で、より効果的なサービスの提供や、観光体験のカスタマイズが可能となるでしょう。

人流データの取得・分析・活用については、株式会社ブログウォッチャーのおでかけ研究所が展開するサービスをおすすめします。おでかけ研究所は、利用者の許諾が得られた位置情報ビッグデータを活用し、地域の観光や交通などの課題を解決するためのDX推進をサポートしています。

Odekake Labo おでかけ研究所 | 株式会社ブログウォッチャー

また、観光客を誘致するための人流データ活用については、次の資料もご覧ください。

業界別活用事例「観光×人流データ活用」 | 株式会社ブログウォッチャー