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OD調査にも活用可能!位置情報データで人流や車の流れを把握する方法とは?

国土交通省や民間の調査会社が、車の交通量や流れ、人や物の移動を把握するために行っている調査をOD調査といいます。

OD調査とは、「Origin(出発地) − Destination(目的地)調査」の略で、従来は調査担当者による手動のカウントやアンケート調査で行われてきました。デジタル化の進んだ現代、もっと効率的に調査する方法はないのでしょうか?

今回はOD調査の概要から従来の調査方法、データの活用方法、位置情報データを使った新たな調査方法などについて解説していきます。

OD調査とは?

OD調査は、自動車起終点調査と表現されることも多く、一般的には人や物、車が移動する起点(出発地)と終点(目的地)を一対として把握するための調査を指します。OD調査で得られたデータは、将来の交通需要を予測するために用いられ、道路計画や交通施策はもちろん、街づくりや観光振興の目的にも活用されます。このような調査は1915年に米国・ニューヨーク州で行われたものが最初といわれており、日本では1928年(昭和3年)に初めて実施されました。近年では環境対応車(ハイブリッドやEV車など)の普及調査や、トラックの輸送品目の調査としても活用されています。

OD調査の実施方法

OD調査を実施するのは、国土交通省のほか、通常は地方自治体や民間の調査会社、NEXCO東日本(東日本高速道路株式会社)をはじめとする高速道路の管理会社などです。

国土交通省が定期的に実施しているOD調査の場合は、秋季(9月~11月)のある1日を対象日として、その日における自動車の運行状況を把握します。調査の主な項目は以下のとおりです。

  • 出発地・目的地

対象となる自動車の出発地と目的地です。

  • トリップ長

起点と終点間の長さで、移動距離となります。

  • 運行目的・乗車人員(乗用車類)

調査対象が乗用車であれば、乗車した人数と移動した目的を調査します。

  • 積載品目・積載重量(貨物車類) 

調査対象がトラックや軽貨物などであれば、積載している物の種類や積載重量を調査します。

調査項目は、ほかにも使用燃料や車種、車両重量、運転者の性別、年齢などが調査の対象になっており、国土交通省はこれらの項目を、無作為抽出した車両オーナーへのインタビュー(訪問調査)や郵送による調査票の回収、路上で運転者に協力してもらうアンケート調査(路側OD調査)を通じて集計してきました。調査方法は逐次社会情勢に合わせて変更されており、2010年度には路側OD調査が廃止され、2015年度からはWebによるOD調査が開始されました。※高速道路の利用調査はNEXCOに委託

2020年度には、自家用車は全国7,500万台の約5%、営業用車は全国150万台の約20%に対してOD調査が実施できています。OD調査によって明らかになる交通の流動や人流の情報は、地域の交通状況改善や地域振興を考える際には必ず必要となるデータです。またこのデータは、街づくりや店舗の出店計画、建築物(マンションやデパート、公共施設等)の提案などにも活用可能なのです。

OD調査の問題点

交通状況の改善や地域振興のために欠かせないOD調査ですが、調査方法にはいくつかの問題点があります。

まず問題なのは、従来の調査方法ではコストがかかりすぎることです。無作為の訪問調査や郵送による調査には、多大な人件費や経費がかかります。また調査時間や集計までの期間も長くかかるので、これらもコストに算入すべきでしょう。次に問題なのは、全体的に調査方法がアナログである点です。インタビューやアンケートで集計したデータを、統計として扱いやすいデジタル情報に変換するために、ここでもまた時間とコストがかかります。加えてインタビューやアンケート回答は、正確性に欠ける可能性がある点も懸念されます。

このような問題を解決するため、近年はWebによる調査方法や動画(Webcam)を用いた画像解析など、アナログ的な調査手法からデジタル的な調査手法へと変化し始めています。

交通の流動や人流の情報は、位置情報データから取得できる

国土交通省では、交通関連ビッグデータを踏まえた総合都市交通体系調査のあり方として「スマートプランニング」という調査手法を推進しています。これはマクロ的な視点で交通量や人、物の移動を調査するOD調査とは異なり、ミクロ的な視点でゾーン内の詳細な人の動きを把握することを目的としています。スマートプランニングは、個人単位の行動データをもとに人の動きをシミュレーションし、施策実施の効果を予測したうえで施設配置や空間形成、交通施策を検討する計画手法です。

スマートプランニングはインタビューやアンケートというアナログ的な手法ではなく、正確性の高い行動データを取得するため、デジタル技術を活用します。例えば携帯電話の基地局のデータやスマートフォンのGPSデータなどの位置情報、交通系ICカードの利用履歴情報などを取得し、統計に活用するのです。スマートプランニングはこのようなデータをもとに、公共施設の立地や、街における道路空間の配分を検討していきます。位置情報をはじめとした様々なデータの活用をOD調査の調査手法に置き換えれば、従来のOD調査の弱点であったアナログ的手法やコスト、調査期間の長さなどの問題を解決してくれることになるのです。

位置情報データの活用がOD調査を変えていく

スマートプランニングの例でもわかるとおり、スマートフォンの普及は端末レベルでの位置情報の取得を可能にしました。OD調査やスマートプランニングでも、こうした位置情報データを活用することにより、人や車の流れを把握することができ、街づくりや道路計画の策定に情報を活かすことができます。

位置情報データとは?

位置情報データとは、GPSや携帯電話などの基地局、Wi-Fiスポット、ビーコンなどを使っているスマートフォンやモバイルパソコン、ナビゲーションシステム(以下、デバイス)から得られる、ユーザーの位置に関わる情報のことです。この位置情報データを、ほかのさまざまなシステムやアプリケーションと併用することにより、デバイスごとの移動経路や移動履歴、道路の通行量や公共施設の混雑具合などを把握することができます。近年のスマートフォンの普及率はとても高く、このようなデバイスから取得できる位置情報データは、OD調査でも十分に活用できるものです。

位置情報データの活用は大規模な調査を必要としない

デバイスから得られる位置情報データは、従来のOD調査のように大規模な調査を行うことなく取得できます。高い人件費や経費、長期間の調査を必要としないのです。また得られるデータもアナログではなくデジタルデータなので、その後の分析でも活用もしやすいものだといえます。スマートプランニングでも実証が進むように、いずれはOD調査でも位置情報データの活用が進んでいくことでしょう。

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コロナ前・後の状況把握にも位置情報データの活用が有効

2020年から2022年にかけては、コロナ禍の影響で日本国内でもさまざまな移動制限や行動制限が行われました。都道府県をまたがった移動が制限されたことにより、大きな影響を受けたのが航空会社や鉄道会社などの運送業者と観光業です。特に観光業は、ホテルや旅館のような宿泊業者や小さな土産物店、地元の旅行業者などで構成されており、観光客の減少が経営に与える影響はとても大きいものです。2022年後半から行動制限は解除されましたが、コロナ前・コロナ後の回復度合いには、地方によって大きな差が出ていると思われます。このような実態の把握には、大規模で時間のかかるOD調査のような調査はまったく適しません。位置情報データであれば、ほぼリアルタイムに人や車の動きを把握することができます。位置情報データを活用すれば、人の流れに沿った効果的なプロモーションを実現することが可能になるのです。

まとめ:位置情報データの活用はOD調査の精度を向上させる 

位置情報データを用いて移動経路や移動履歴、道路の通行量などを調査すれば、OD調査の結果を補完することとなり調査の精度が上がります。コストや調査期間、欲しい精度などを考え合わせ、必要に応じて位置情報データを組み合わせて活用してはいかがでしょうか?特に行動経路や行動履歴に関しては、従来のOD調査では得られないような、高精度なデータを入手できることでしょう。