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世界中で加速するCookieレス!これから求められるマーケティング手法とは?

プライバシー保護の観点から、世界中でCookieレス化(Cookie廃止)の動きが加速しています。著名なWebブラウザのベンダーは次々とサードパーティCookieの廃止を表明し、日本でも個人情報保護法が改正されてCookieに関わる規制が進み始めています。このようなCookieレス化は、今までの広告配信手法にどのような変化をもたらすのでしょうか? また、Cookieレス時代に有効なマーケティング手法とはどのようなものなのでしょうか? 今回はCookieの概要からCookieレスの状況、Cookieレスに対応したマーケティング手法などを解説していきます。

なぜCookieレス化が進むのか

冒頭でも書いたように、現在世界中でCookieレス化の動きが加速しています。まずCookieとはどのようなもので、なぜ廃止の動きが起きているのでしょうか?まずは、Cookieの概要(仕組み)と、なぜ廃止の動きが起きているのかについて説明します。

そもそもCookieとは?

Cookieとは、GoogleChromeやEdgeのようなWebブラウザを経由し、パソコンやスマートフォンに保存されるデータのことです。Cookieは、ファーストパーティCookieとサードパーティCookieに分かれます。

例えば、以前訪問したサイトに再度訪問すると、ログインの画面でIDが先に入力されていたという経験はありませんか? これはファーストパーティCookieが保存されているためで、ユーザーの識別に使われているのです。ファーストパーティCookieはこのように、主にそのサイトのみで使用されるCookieを指します。

もう一方のサードパーティCookieは、単独のサイトではなくサイトを横断して使うことができます。広告配信でサードパーティCookieがよく使われているのは、リターゲティング広告です。あるサイトで特定の広告をクリックして閲覧すると、別のサイトに行っても同様の広告が表示されることはないでしょうか? この仕組みを可能にしているのがサードパーティCookieで、ユーザーのトラッキング(追跡)ができます。サードパーティCookieを用いユーザーをトラッキングすることで、年齢や性別、嗜好を分析し、それに合わせた広告を表示させることも可能になります。

ただし、これは必ずしもユーザーの意向に沿ったものではありません。広告の発信者が、勝手にユーザーの情報を使っているともいえるのです。また一部の不審なサイトでは、Cookieの不正利用や流出などのリスクがあることも事実です。このような観点から世界的にプライバシー保護の考え方が高まり、近年ではCookieを受け入れるか否かをあらかじめ尋ねてくるサイトも増えています。また、Cookieそのものを廃止してしまおうという動きも始まっているのです。

加速するCookieレス化

Cookieレス化(Cookie廃止)の動きは、まず欧米で始まりました。EUでは2018年に「EU一般データ保護規則(GDPR)」が施行されました。またアメリカ・カリフォルニア州でも、CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)が施行され、個人に関連した情報の保護と利用規制が始まっています。日本でも2020年に個人情報保護法が改正(公布)され、新たに個人情報に関わる規定が追加となりました。この法律は2022年4月から施行となり、すでにCookieに関する規制が始まっています。

このような規制の動きを受けて、Webブラウザを提供している企業もCookieレス化を進めています。Apple社が提供するSafariでは、2020年3月にサードパーティCookieを全面的にブロック。Google社の Chromeでも、サードパーティCookieのサポートを2024年後半に廃止する予定になっています。またオープンソースとして提供されているFirefoxは、ブロックリストによるトラッキング規制をすでに実装しています。

このような規制やCookieレス化の動きは今後も加速することが予想されます。将来的にサードパーティCookieは、全廃となる見込みなのです。

Cookieレス化で変わる広告配信

世界的なCookieレス化の流れは止めることができないと思われますが、Cookieレス化は広告配信やマーケティングに大きな影響を与えます。先述のように長年広告業界は、リターゲティング広告やユーザーの属性分析にサードパーティCookieを使ってきたからです。今まではユーザーの年齢や性別、嗜好からリードになる可能性の高い顧客に絞って効率的に広告配信を行えましたが、サードパーティCookie廃止後はこのマーケティング手法が使えなくなってしまいます。大手のYahoo!やGoogleなどではビッグデータを活用したり、ほかの方法でユーザーの嗜好や属性を分析したりすることができるかもしれませんが、サードパーティCookieを使ってユーザーのトラッキングデータから広告展開をしていた企業は、マーケティングの方法を根本的に変えなければならないのです。

今後ユーザーのデータを活用するには、データクリーンルーム(※)やゼロパーティデータを利用するなど、いくつかの方法が考えられます。

※データクリーンルーム:ユーザーの許諾に基づき、個人情報を収集・管理する仕組み。個人情報に対してはアクセス権限管理やプライバシー保護機能を備え、開示請求や訂正、削除要請などがあった場合には、速やかに法令を順守し実施される。ユーザーの権利を守りながら、広告配信などに個人情報を活用できる仕組み。

重要度を増すゼロパーティデータ

企業が扱うユーザーのデータ(消費者データ)は、一般的に以下の4つに分類されます。

  • ゼロパーティデータ

ユーザー(顧客)に同意を得たうえで収集した自社データです。例えば、使用目的を明らかにしたうえで行うアンケート調査や直接ヒアリングを行ったデータなどがこれに相当します。

  • ファーストパーティデータ

自社でユーザーから収集したデータ(購入履歴、住所、職業、携帯番号等)を指します。自社の営業マンや従業員が収集したデータもこれに含まれます。ゼロパーティデータとの違いは、ユーザーが意図的かつ積極的に企業に提供したデータではないという部分です。

  • セカンドパーティデータ

他社がユーザーから収集したデータを、セカンドパーティデータといいます。言い換えればこれは他社にとってのファーストパーティデータとなります。一般的には子会社や関連企業などのパートナー企業や、特別な契約を結んだ企業から入手できるデータを指します。

  • サードパーティデータ

データ収集を専門に行う調査機関や、データ提供企業から入手できるデータです。デモグラフィックデータ(年齢、性別、職業、学歴、年収などの人口統計学的なデータ)や企業情報、マーケット情報などがサードパーティデータに相当します。

このようなデータに含まれる個人情報は、トラブル防止のためにも出自が明らかなこと、信頼性の高いことなどが求められます。特に出自の不明瞭な個人情報は、目的が提示されていない、同意を得ていないなどの問題が発生する可能性があり、内容が深刻であれば提供した企業だけでなく活用した企業の責任も問われることになります。

上記で挙げたデータのうち、ゼロパーティデータやファーストパーティデータ以外のデータは、他社を経由して手に入れられるデータです。個人情報利用への規制が厳しくなるなか、自社で収集し信頼性の高い0パーティデータやファーストパーティデータの重要度が増しているのです。

Cookieレス時代のマーケティング

先述のように、Cookieレス化が進むとユーザーのデータ入手が困難になります。今後の広告配信やマーケティング分析にはゼロパーティデータやファーストパーティデータを用い、必要に応じて信頼できる企業から入手したセカンドパーティデータやサードパーティデータを使っていくことになるでしょう。

求められるのはオフライン行動の可視化

ただし上記のような方法が有効なのは、あくまでオンラインでのユーザーの行動や思考を分析する場合です。オンラインと実店舗でのマーケティングを展開する企業の場合には、ユーザーのオフラインでの行動も把握しておく必要があります。GoogleやAppleという大企業であれば、スマートフォンのOSに付与された広告ID(GAIDやADIDと呼ばれる)を使用してオフラインでもユーザーの行動を知ることができますが、一般の企業ではオフラインの行動履歴を把握することは困難です。

このような場合には、位置情報データとオンラインデータの併用が有効です。プラットフォーマーが提供する、Cookieに依存しないユーザーのデータと位置情報データ(オフラインデータ)を組み合わせて分析すれば、ユーザーの動向を知ることができます。またこのようなデータとデモグラフィックデータをあわせて活用すれば、さらに精度の高いターゲティングと広告配信も可能となります。

株式会社ブログウォッチャーでは、スマートフォン向け位置情報データサービスの「プロファイルパスポート」や、位置情報データを活用したデータクリーンルーム分析を提供しています。

まとめ:Cookieレス化は止められない。どのように対応していくかが大切

世界的なCookieレス化は、時代の流れでもあり止めることはできません。これから施行されていくさまざまな規制の情報を注視しながら、規制に応じた新しいマーケティングの形を考えることが重要です。ただし時代が変わっても、ユーザーの嗜好や行動を知ることは依然としてマーケティングの王道です。プラットフォーマーの提供するデータや位置情報データを活用し、ユーザーに寄り添ったマーケティングを心がけていきましょう。