IT技術の活用や通信インフラの整備・AIの発達とともに、国内外でスマートシティ構想が急速に進み始めています。スマートシティは、地方の少子高齢化や都会への人口集中による労働力不足などの社会問題を解決する可能性があると期待されていますが、実際の取り組みとはどのようなものなのでしょうか? 今回は国内外のスマートシティの事例を中心に、スマートシティの「今」と成功のポイントを紹介していきます。街づくり・非集計ODデータに関する資料はこちらをクリックスマートシティとは?スマートシティとは、デジタル技術(IT技術やAI、デジタル通信インフラなど)やデータを活用して住民や企業の利便性を向上させるとともに、エネルギーや資源の活用も最適化していこうとする都市のことです。人口集中や少子高齢化など、都市が抱えるさまざまな課題を解決する取り組みとして、日本のみならず世界中で注目されています。スマートシティの詳細はこちらの記事をご覧下さい。→ スマートシティとは?データを活用した街づくりで住みやすい街になる国内外のスマートシティ 事例10選ここでは国内外のスマートシティの事例を紹介していきましょう。日本国内のスマートシティ事例 6選東京都港区 ソフトバンクや東急不動産と連携したスマートシティ実証実験東京都港区は民間企業のソフトバンクや東急不動産と提携し、国家戦略特区である竹芝エリアで都市型スマートシティのモデルケース構築に取り組んでいます。この竹芝地区では、ロボティクスやモビリティ、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、5G(第5世代移動通信システム)、ドローンなどの新技術を活用し、最先端テクノロジーの検証と都市の課題解決を行う「スマートシティのモデルケース構築」を計画しています。香川県高松市 スマートシティたかまつ香川県高松市では産学民官(民間企業・教育機関・地域住民・国や地方自治体)が連携し、地域課題の解決と地域経済の活性化を図ることを目的に「スマートシティたかまつ」を推進しています。これは、産学民官に散在しているさまざまなデータをIoTの共通プラットフォーム上に集約し、行政の効率化と地域経済の活性化を図ろうとする試みです。たとえば、防災では市内13ヵ所の水位センサーと潮位センサーからデータを収集、観光では50台のレンタサイクルの移動履歴データなどが収集され、防災警報の迅速な発報や観光資源の効率的活用が行われます。また、市街地の活性化の取り組みでは、商店街に設置された人流カメラを活用し、イベントの開催や店舗のリーシング等の効果測定を行っています。福祉の分野では、高齢者の呼吸や心拍等のバイタル情報を収集するなど、ICTを活用した地域包括ケアシステムの構築を計画しています。神奈川県横浜市 横浜スマートシティプロジェクト神奈川県横浜市は2010年に経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証地域」に選ばれ、2014年までの実証実験でCO2排出量29%削減、省エネ率17%という成果を上げています。横浜市ではこの実証実験で得られたノウハウを活かし、現在は「横浜スマートシティプロジェクト」を推進しています。横浜スマートシティプロジェクトは、防災性、環境性、経済性に優れたエネルギー循環都市の実現を目的として複数の民間企業と提携。再生可能エネルギーや水素などの利用率を全体の30%まで高めるほか、横浜市全体の電力需要を可視化、エネルギーの最適化を行って省エネルギーな街の実現を目指します。福岡県北九州市 北九州スマートコミュニティ創造事業北九州スマートコミュニティ創造事業は、経済産業省が主導する「次世代エネルギー・社会システム実証事業」として2011年から2016年まで行われていた実証事業です。本事業のメインテーマは街のスマートグリッド(次世代送電網)化で、地域内のすべての家庭にスマートメーターを設置。需給状況に応じて電力料金を変動させる電力のダイナミックプライシングを実現しました。このエネルギーマネジメントの結果、実証事業に参加した各家庭で10%程度の省エネ効果が確認され、現在では北九州市のさまざまな地域で実証から実装へのフェーズが進められています。長野県伊那市 スマートローカル長野県伊那市では住民の高齢化が進み、食料品や日用品の買い物など、生活インフラの確保が難しくなっています。そこで伊那市では、ケーブルテレビのリモコンで食料品や日用品を購入でき、ドローンによる当日配送が可能なサービスを導入しました。購入した商品はまず地域の配送拠点に送られ、そこから配送用ドローン(自律飛行)で高齢者の近隣にある公民館に運ばれます。購入者は近くの公民館に自ら取りに行くか、ボランティアによる配達で商品を手に入れることができます。山が多く坂道や険しい道の多い伊那市だからこそ必要になるサービスなのです。またスマートローカルでは、ほかにもAIを活用した自動配車乗合タクシーや移動診療車、モバイル市役所などさまざまなサービスを住民に提供しています。福島県双葉郡浪江町 浪江町復興スマートコミュニティ東日本大震災で大きな被害を受けた福島県の浪江町では、震災からの復興にあたり「非常時の安全・安心」、「再生可能エネルギーの導入」、「生活利便性の向上と新たな雇用の創出」の3点をスマートコミュニティの構築で実現しようとしています。浪江町では町内にある道の駅を拠点とし、EV(電気自動車)を活用したレンタカーやカーシェアリング、乗合タクシーを提供。町民はもちろん、訪問者の利便性を高めるための取り組みを進めています。また災害公営住宅への太陽光発電設備の導入を始めとするスマートコミュニティ化により、約500トンのCO2削減や、再生可能エネルギーの導入率向上(目標26%)などの導入効果を上げたいとしています。海外のスマートシティ事例 4選シンガポール Smart Nation Singaporeシンガポールでは政府が中心となってスマートシティ化を推進し、2023年にはスマートシティランキングでアジア1位となりました。国内の複数の都市で国民デジタル認証、電子決済基盤構築、センサーネットワーク構築、交通機関のスマート化、公共サービスの横断的利用などを進め、現在では行政サービスの99%がデジタル化されています。また国全体に設置されたIoTセンサーからの情報を基に、大気の汚染状況や気温などのデータを収集、行政や民間企業に情報を提供するプラットフォームを構築するプロジェクトも進んでいます。韓国 スマートシティ政策韓国では、スマートシティの実証実験先として2都市(世宗市、釜山市)を選定。AI技術やIT技術を活用した最適な交通手段を提供できるように都市開発を進めています。また同時に国内でAI、5G、ブロックチェーンなどの最新技術を活用して、スマートエネルギーや自動運転などの産業新興も進め、上記の実証実験に反映させていく考えです。ドバイ スマート交通戦略 中東・アラブ首長国連邦のドバイでは、2030年までに交通機関の4分の1を自律走行へと移行することを目標に「スマート交通戦略」を進めています。これは交通機関の自律走行で、44%の交通費削減(年間で2億4,500万ドル)や12%の空気汚染削減(年間で49億ドルの経済効果)などを目標とした戦略で、2030年までに4万2,000台のEV導入も実現する予定です。さらにドバイではインフラ整備に数百万ドルを投資し、無料の公共駐車場や充電施設、通行料の免除や車両登録の割引を通して、EVの使用をさらに魅力的なものにする計画です。コペンハーゲン(デンマーク) コペンハーゲン2025気候プランデンマークの首都コペンハーゲンでは、2012年からカーボンニュートラルな都市を目指し「コペンハーゲン2025気候プラン」をスタートさせています。このプランは、自動車や自転車の位置情報をセンサーで収集し、交通渋滞の改善やCO2の削減に役立てるプロジェクトの「CITS」、人や車両の移動データ、温度と汚染物質の分布などが計測できるセンサーが搭載された街灯を設置するプロジェクト「DOLL」など、いくつかのプロジェクトに分けて進められています。いずれのプロジェクトも温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラルを目的としたもので、コペンハーゲン以外の都市も順次スマートシティ化に着手していく予定となっています。デンマークは国を挙げてカーボンニュートラルに取り組んでいるのです。高度なスマートシティ実現に必要なポイントスマートシティ実現においては、AIの力を借りながらさまざまな種類のビッグデータを収集・分析し、活用することが必要です。ビッグデータといえば、従来はモノやスポットに特化したデータが中心でした。街の主役である「人」に焦点をあてたデータは、アンケート調査や交通量調査といったアナログな手法に頼ることが多く、スマートシティに活用するデータとしては量・質ともに十分とは言えませんでした。近年、その弱点を克服するものとして注目されるのが「人流ビッグデータ」です。人流ビッグデータは、スマートフォンやタブレットなどの端末から取得した位置情報から生成されるデータのことです。人がいつ、どこに、どの程度滞在したかといった人の動きを解像度高く把握することができます。性別や年代といった属性情報も取得できるほか、高頻度での取得やエリアや時間の特定も可能です。購買データや電気使用量など実際の活動を把握できる他のデータと組み合わせることで、どのような属性の人が、どんな活動を行っているかといった更に高度な分析も行うことができます。高度な分析は都市機能への新たなニーズを発掘することや、オンデマンドモビリティといった人の動きに応じたサービスを提供することに役立つと期待されています。データに基づくより精度の高いスマートシティの実現には、今後ますます人流ビッグデータの活用が不可欠になるでしょう。スマートシティでの人流データの活用については、次の記事も参考にしてください。スマートシティの実現に向けて活用がすすむ人流ビッグデータとは?そのメリットを解説#1 ビッグデータを活用した、まちづくり最前線 第一部「ウェルビーイング時代のスマートプランニングとは?」まとめ:スマートシティ推進には人流ビッグデータの活用が重要スマートシティへの取り組みは国内外で急速に進んでいます。最新情報や事例を積極的に収集し、自らの取り組みにその知見を活用することが重要です。多くの事例を知ることにより、成功ポイントは見えてくるでしょう。データドリブンはスマートシティ化にとって不可欠な要素ですが、なかでも人の動きの可視化はとても重要です。株式会社ブログウォッチャーでは、許諾を得たユーザのスマートデバイスから取得した位置情報データを蓄積・分析・活用できる位置情報データプラットフォーム「Profile Passport」を提供しています。興味がおありの方は、こちらからサービス内容をご確認下さい Profile Passport DMP | 株式会社ブログウォッチャー街づくり・非集計ODデータに関する資料はこちらをクリック